急な崖をただただ転げ落ちた。
病が発覚した2005年の春、そんな心持ちだった。
2006年、移植治療の日々。
丸1年のほとんどを入院、また通院で過ごした。
そして2006年6月21日、
念願というより恐怖のほうが大きかった移植手術が始まった。
移植手術はその前後が辛い。
手術までの1週間は放射線治療と抗がん剤の日々。
ドラマなどでは抗がん剤で髪が抜けていく姿などがひとつのポイントとなる。
しかし自分の場合は、吐き気やだるさで抜けていく髪など構っていられなかった。
手術後はGVHDという副作用が止めどもなく襲ってきた。
何度、立とうとしても立てなくて、やっと這い上がったと思えば、ぬかるんだ地面に足をさらわれる。
何もかも嫌になって全てを投げ出したくなる夜も、ただ静かに耐えるしかなかった。
もうこれ以上施しようがないと言われたこともあった。
心がおかしくなるほどに憎み、敵視した病気。
さっさと消えてくれと毎夜祈った。
なぜ俺が・・・などと悔やむ想いもあった。
だが、本当の敵はそんな心の弱音を受け入れてしまう自分だった。
そのことに気付いてから、弱音も涙もすべて我慢することに決めた。
そう思うようになってから、一進一退をつづける病状も、わずかに”進む”ほうへと向いているような気がした。
そして、今日で5年の歳月が流れた。
まだまだ闘いの日々は続くだろうが、医療的には完治を迎えた日。
自分の体を見返すと、痩せてしまった骨。
一方で運動をできなかったことで付いてしまった無駄な肉。
しかし、たしかに生きている。
移植を「0」とすると「1826日分」の成長を遂げた自分がいる。
俺はこの病気で何を失い、何を得たのだろうか。
忘れようとしても忘れられない記憶。
いや忘れてはならない記憶だろう。
応援してくれた方々への感謝を心に焼き付けるためにも、
この経験を活かして世の中に役立つ人間になる・・・そのためにも。
明日からまた普段通りの生活が始まる。
少しだけ新鮮な気持ちとさらなる強い意志を持って、前に進んでいこう。
まだ見えない未来に希望を持って歩いていこう。
すべてに感謝を込めて。
P.S.
明日はマルク検査。
その結果によって、5年目からの治療方針が決まります。
結果良好でありますように・・・。