「死ぬのが恐いから飼わないなんて、言わないで欲しい。」
名文というものがある。
たった一行の言葉でもその世界をすべて伝える強い力を持っている。
そういう類いのものは、小説であろうと詩であろうと、そのメディアを飛び越えて永遠に心に残る。
たとえ産業広告のキャッチコピーであったとしても、そこを飛び出して胸にグッと突きささる。
そして、そういう文と多く出会うことは、自分の心の中にあるワールド、いわば価値観の血となり肉となる。
おれは犬が好きだ。
というより犬との縁があるのだと思う。
生まれてこのかた、自分の意志で犬を飼ったことがない。
いつも誰かが連れてくるのだ。
おじいちゃんが飼っていた犬、
親戚が飼えなくなった犬、
みんなにもらいそびれてしまった子犬、
母がどこかから連れてきた犬、
だから自分が本当に犬が好きなのかはよくわからない。
ただ敵意を示さない犬ならどれも可愛いと思える気持ちはある。
年老いた犬でも、生まれたての犬でも、一つの命。
つぶらな目で甘え、ときには吠え立てるように生命を表現する。
長い間、飼っていた犬が死ぬことはとても恐い。
それは生と死に接することが極端に少なくなった現代人なのだから当然でもある。
人は年をとっていく中で多くの生を経験し、また多くの死に立ち会う。
自分のことや友人の場合も含めて様々な環境で、子どもが生まれる嬉しさも、肉親が亡くなる悲しさも、自分さえ生きていればきっと経験することだ。
たった一つの命。
世の中には数えきれないほどの”たった一つの命”がある。
だから地球は豊かさに満ちあふれた星なのであろう。
・・・なんていうところまで考えを張り巡らせてしまう。
これが名文の効果なんですねぇ。
たとえ短い一行でも、心にささるキャッチコピーってすばらしい。
あと、やっぱり凄いな!って思ったのが、糸井さんのこのコピー。
この映画のもつ世界観をすべて代弁するかのような言葉。
それはたった「3文字+。(句点)」に集約されている。
嗚呼すばらしい。